観桜図屏風
かんおうずびょうぶ
概要
公家風の人びとが、穏やかな景色の中で満開の桜を楽しんでいます。景色も人物も、繊細な筆遣いや柔らかな描線であらわされています。こうした描き方や題材は、江戸時代のやまと絵の典型と言えるでしょう。画題は不明ですが、平安時代に成立した『伊勢物語』のうち第八十二段「渚の院」を描いている可能性があります。
やまと絵とは平安時代以降に、中国風の絵画に対して描かれた日本オリジナルの風景や風俗、物語を繊細に描いた絵をいいます。作者の住吉具慶(すみよしぐけい)は、やまと絵の伝統を継承する住吉派というグループに属する絵師です。住吉派はかつて鎌倉時代に存在した流派でしたが、その後途絶え、江戸時代に入り土佐派から分かれる形で復興しました。住吉派は、狩野派や土佐派と並び、幕府の御用絵師をつとめました。住吉具慶も代々受け継がれてきた豊富な手本や資料に基づき、古典の解釈を踏まえた制作を行い、時代のニーズに応えてきました。伝統を守る中にも具慶本人の個性はあらわれるようで、人物の豊かな表情や顔立ちなど、それぞれの違いを細やかにとらえようとしているようです。