栗の枝を持つ山姥と金太郎
くり えだ も やまんば きんたろう
概要
喜多川歌麿(きたがわうたまろ)の描いた浮世絵版画です。甘えている様子の子どもは昔話の金太郎、抱きつかれているのはお母さんの山姥(やまんば)です。お母さんは、栗の枝を持ち、子どもに優しく語りかけるようにかがみこんでいます。その結われていない伸びた髪、そして木の葉を綴ったぼろぼろの衣を思わせるもようの着物が、この女性が山姥であることを示しています。しかし母親は、山姥と聞いて私たちが思いうかべる恐ろしい鬼婆ではなく、若く美しい女性として描かれています。
歌麿は晩年、山姥と金太郎を数多く描いています。一般的な母と子の情愛を山姥と金太郎に託したのでしょうか。それとも幕府の禁令によってたびたび画題に制限を受けていたため、取り締まりを受けずに女性像を描くことができる落としどころとして生まれた主題がこれだったのでしょうか。はっきりとした理由はわかっていません。