表打蒔絵高下駄(女物)
おもてうちまきえたかげた おんなもの
概要
女性物の高下駄である。寄贈者の母の嫁入道具であると思われる。
表打(畳表が貼られている)で、爪皮(爪掛)部分(帆布製と思われる)の表面には草花をモチーフとした細やかな装飾が黄蘗(きはだ)色の塗料で布地にプレスされて浮彫のようになっており、赤、青、橙などの塗料で所々アクセントが付けられている。縁にウサギの毛とおぼしき白い毛が付いており、金具で台に固定されている。鼻緒は金に赤いラインと赤い模様が入ったものと、銀に赤いラインが入ったものが2種類組み合さっている。
台には朱漆が塗られ、側面に松の樹の間を羽を広げて飛ぶ鶴が蒔絵で描かれている。歯部分にも朱漆が塗られ、前後の歯と歯の間は黒漆が塗られているが、欠損や塗装の剥がれがある他、接地面も使用による摩擦で削れており左右で高さが違う。接地面には当初滑り止めの金具(鼻金)が付いていた。また、金具はどれもサビと黒ずみがある。
【高下駄(たかげた)】
桐の台にカシ・ホオ・ブナの歯を差し込んだ差歯の高い下駄で、主として雨天の歩行に爪革をつけて履く。竹皮や籐表つきの高下駄は、足袋を履いて余所行に用いた。西日本ではタカゲタ・タカブクリ(高木履)・サシゲタというが、同種の下駄を東日本ではアシダ(足駄)・アツバという。アシダは足下の訛りで、古代には連歯の高下駄であったが、13世紀ころから露卯(ろぼう)差歯高下駄が出現し、18世紀には現在のような陰卯の差歯高下駄となる。江戸時代はじめに下駄の語が用いられるようになり、低い駒下駄に対し、関西では高下駄とよぶようになった。
『日本民具事典』(ぎょうせい、1997年)316頁
※参考資料
・『[絵引]民具の事典』(河出書房新社、2008年)124-125頁
・『砺波の民具』(砺波市立砺波郷土資料館、2008年)386頁
・HP『砺波正倉』(2016年12月21日アクセス)