聖遺物箱を担ぐ少年
せいいぶつばこをかつぐしょうねん
概要
ベルギーのヘントに生まれる。建築を学ぶために、ヘントの美術学校に入ったが、在学中から絵画と彫塑に関心を寄せた。ベルギー象徴主義のグループ「レ・ヴァン(二十人会)」に参加して、クノップフやアンソールらと交流した。絶頂期である1890年代の代表作《ひざまずく青年の泉》(1898年)は、美術館のエントランスを飾るために構想され、全裸の五人の若者が円形になって跪き、こちら側に背を向けて噴水の中心に向かうモニュメンタルな彫刻だが、痩身の肉体表現には、一時代上のロダンに見られた量感あふれる表現と情熱的な感情はない。中世ゴシックに影響を受けた、神秘的、内省的な彫刻を制作し、クリムトや、ドイツの彫刻家レームブルックやバルラッハらに大きな影響を及ぼした。 代表作《ひざまずく青年の泉》で完成をみる、ひざまずく裸体の青年をモティーフにしたミンヌの一連の作品の一つである。青年の肉体は量感に乏しく、たおやかで、か細い。しかし、抑揚が少なく単純化されたその肉体には内省的で深い感情が込められている。また脆弱な両腕は、聖遺物箱の物理的な重量を超えた重みを感じさせ、うつむいた顔は憂愁や悲嘆の情に包まれている。大理石のもつ透明でもろい質感も、青年の精神性を高めるのに寄与している。自然主義的な表現を離れ、宗教的な感情を超越した時点で、肉体と精神との融和が追求された作品である。(F.M.)