群像
概要
関根正二の画家としての生涯は1914 (大正3)年から1919(大正8)年までのわずか5年にすぎない。この間、《信仰の悲しみ》や《子供》など油彩画の名品を残しているが、関根の天性ともみえる才能は、むしろペンや鉛筆による素描類の線的表現のなかにあらわれているのではないか。たとえばこの《群像》と題された木炭によるスケッチ。複数の人物をかたまりとして鷲づかみしているようにみえるが、じつは画面中央の農民の親子風の二人に焦点があてられ、あとの四人は影に沈んでいる。けれどもその明暗はあくまで線によって描きわけられて、影の部分のほうに運動感をあたえ、光をあびた親子はやや不自然な動作で静止しているが、それがまた画面全体に不思議な効果をもたらしている。どんな場面を想定しているのかはともかく、全体と細部を瞬間ごとにとらえてゆく自在な線描の冴えたセンスは、この一点だけからもあきらかである。(東俊郎)