小丹波村
概要
千葉の佐倉藩の江戸屋敷で生まれた浅井は、1876(明治9)年、国沢新九郎の洋画塾・彰技堂に入門、次いで工部美術学校に入学し、イタリア人教師のアントニオ・フォンタネージから、バルビゾン派の流れを汲む自然描写を学んだ。フォンタネージの帰国後も、師にならって関東を中心に写生旅行をしばしば試み、農村などを主題にした初期の代表作を生み出した。
本作品は、現在の東京都西多摩郡奥多摩町に取材したものである。本作品が制作された1893(明治26)年10月は、浅井が結婚をした月でもある。前年11月、浅井は、写生旅行の折に小丹波村に一泊したことが知られており、結婚早々に再取材に赴いたとは考えにくく、前年の写生をもとに本作品を描いたとされる。人物がいる辺りを明るく照らす光の描写は、全く自然であり、写生から本制作までの月日を感じさせない。