牛皮華鬘
ごひけまん
概要
華鬘は仏殿内陣の長押(なげし)などに懸けられた荘厳具(しょうごんぐ)で、起源は古代インドにおいて貴人に捧げられた生花で作られたレイのような花輪であると言われる。本品は京都・東寺旧蔵の牛皮(ごひ)製、団扇形の華鬘で、現在本品を含め13枚と残片が当館に所蔵されている。寺伝では応徳3年(1086)の塔供養の荘厳に用いられた具と伝えるが、この一群の華鬘は当初から一具をなしたものではなく、寺内の各堂から集められた感が強い。いずれも牛皮を透彫し、表裏に彩色をほどこしている。大別して宝相華(ほうぞうげ)唐草迦陵頻伽対向文と宝相華唐草文の二系統が見られる。登号は宝相華を背景に総角(あげまき)をはさんで向かい合う2羽の迦陵頻伽(かりょうびんが)(極楽にいる半人半鳥の瑞鳥)を表しており、鮮やかな彩色と精緻な截金や金銀切箔(きりはく)の手法を用いている。呂号は宝相華唐草文を暈繝彩色(濃淡や色調の違う色を隣り合わせて立体感やぼかしの効果を生む技法)で表す。双方とも地板の一部と覆輪を欠く。団扇形の牛皮華鬘の遺例としては最古の品。
奈良国立博物館の名宝─一世紀の軌跡. 奈良国立博物館, 1997, p.286, no.38.