懐山のおくない
ふところやまのおくない
概要
この芸能は「おこない祭り」ともよばれ、毎年一月三日に、懐山の泰蔵院で演じられている。愛知・長野・静岡の各県境の山間では春祈祷【はるきとう】としてのオコナイが、それぞれの土地の観音堂・阿弥陀堂などのお堂でおこなわれ、田遊び・猿楽・田楽などの中世芸能が演じられており、懐山のおくないも、それら一連のものの一つである。
懐山には近年まで、およそ四十番の芸能が伝承されており、この種のものの中では、最も数が多かった。また、この中には「まりのかがり」などの猿楽能の曲や「綿付【わたづけ】」、「塩買い」などの、ものまね(狂言)など、特有の曲目も含まれている。
かつては旧暦の一月四日から五日にかけて、夜を徹して演じられたが、現在は一月三日に泰蔵院の裏山にある伽藍祠【がらんし】の前で、「三々九度の盃」、「禰宜【ねぎ】の祝詞」、「順の舞」をおこない、泰蔵院阿弥陀堂に帰って、「順の舞」、「片剣【かたつるぎ】の舞」、「同もどき」、「鬼の舞」、「駒の舞」、「女郎の舞」、「年男」、「田遊び」等の演目を演じ、最後に「鎮【しず】めの獅子の曲」と続き、その日のうちにすべての行事が終る。現在はやや省略された形で演じられているが、伝承芸能四十番の中には貴重な演目が多いので、全く忘失されないうちに記録にとどめて置く必要がある。
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国指定文化財等データベース(文化庁)