二つの像
ふたつのぞう
概要
画面右下に署名:S.MigiSHi
裏面に出品票貼付
出品:第5回日本国際美術展(1959)
初渡仏からの帰国後、作者は日本の古代文化に興味を持ち、埴輪をモチーフに描くようになる。本作品でも埴輪と思われる二つの像が描かれているが、それぞれの形は背景のシャープな色面構成の中で抽象化されている。埴輪の乾いた質感表現から生み出された薄塗りと細かな引っかき線による表現で像が描き出され、白と黒と茶色の色面の中にマチエールの変化をもたらしている。渋めの色調と簡潔で横長の構図は、どこか屏風絵を思わせ、東洋的な雰囲気を感じさせる。1950年代から60年代にかけて、フランスやアメリカの前衛表現が日本画壇に大きな影響を与え、現実の世界から自立した抽象的な美術表現が多く見られるようになった。そのような中で節子も、ブラック風の褐色を基調とした静物画から埴輪の連作を経て、本作品のような非常に現代的で洗練された画面構成の作品を生み出すに至った。
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一宮市三岸節子記念美術館