アンダーソンの壺と小鳥
あんだーそんのつぼとことり
概要
画面左端に署名・年号:S.MigiSHi 1951.9
裏面に画題・年号・署名・住所:アンダーソンの壷と小鳥 千九百五十一年作 三岸節子 東京都中野区鷺宮五ノ四〇七
出品:新制作派協会第15回展(1951)
アンダーソンの壺とは、中国甘粛省の新石器文化である半山文化の彩陶の壺のことである。スウェーデンの考古学者にその名が由来する。この絵のモチーフになった壺は、当館の土蔵展示室に展示されているが、均整の取れた美しい形をしている。「窓際に鳥篭とアンダーソンの壺に挿した枯葉と、広く上部タテにとった窓と、横に流れる雲、いく分象徴的に素材を扱い、新鮮な感情移入を試ろみてみたかったのです。色彩もきわめて節約して、アンダーソンのもつ古代の雰囲気と、小鳥の優しい世界の融合をはかったともいえましょうか。サッと渋滞なく最短距離に出来上がってしまった絵で、思考と逆に、画面の中で割り切れてしまった形が、作者にとっては迫力を欠き不思議さを失ってしまった感があります。何千年も支那奥地、新彊省の砂漠の地中に眠っていた素焼きの壺は、まだまだ私をひきつけております。古代への郷愁の作品といえましょう。」(『日本現代画家選Ⅱ8 S.MIGISHI』1954年)と、この作品について記している。鮮やかな色使いは息を潜め、黒や褐色を基調とした限られた色数により構築性のある画面を作り出している。静物に窓の外の世界も加わり、2羽の白い小鳥が画面に温かみを添えている。ブラックに魅かれ、造形的な静物画を多数制作し、日本を代表する画家として活躍を始めていた時期の作品であり、1952(昭和27)年にパリで開催された20世紀傑作展にも出品された。
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一宮市三岸節子記念美術館