木下貝層
きおろしかいそう
概要
第四紀更新世後期(特に50万年前以降)は,氷河性の海水準変動により,海進(間氷期)と海退(氷期)とが凡そ10万年の周期で繰り返された時期である。一番最近の海進が約6,000年前の縄文海進である。この一つ前の海進は下末吉海進(約12万年前)と呼ばれ,古東京湾と呼ばれる内湾の浅い海が現在の関東平野一円に拡がった。この海に堆積した地層は,関東平野一円に広く分布している。木下貝層は,この時期の浅い海に堆積した様々な堆積構造,化石を含むだけでなく,この時期の地層の研究の端緒となった地層であり,学史的にも重要である。
木下貝層は,第四紀更新世後期(約12万年前)に古東京湾で堆積した下総層群(約50万年前~8万年前)の最上部に存在する化石層(厚さ5.8m)であり,バリア島付近の潮汐流デルタ堆積物として内湾の浅海で形成され,貝類・海胆類が密集して産する.特に,貝類は属・種ともに非常に多く,約200種類が報告されおり,タマキガイ(Glycymeris vestita),ヒメアサリ(Tapes variegata),クサビザラ(Cadella delta),バカガイ(Mactra chinensis),マメウラシマガイ(Ringicula doliaris)などを多産する.大正時代から数多くの古生物学的・地質学・堆積学的研究があり,学術的に重要なものである。天然記念物に指定し,永く保存を図ろうとするものである。