アマリア・ファン・ソルムス=ブランウェルスの肖像
あまりあ・ふぁん・そるむす=ぶらんうぇるすのしょうぞう
概要
アマリア・ファン・ソルムス=ブランウェルスの肖像
あまりあ・ふぁん・そるむす=ぶらんうぇるすのしょうぞう
フランドルの出身で、16歳のときには工房を構え弟子をもっていたと伝えられるヴァン・ダイクは、若くして華やかな活動を展開し、21歳で英国ジェームス1世の宮廷画家となった。22歳からの6年間はイタリアで過ごし、ヴェネツィア派とりわけティツィアーノの作風を吸収しつつ、貴族の肖像画を数多く手がけ大成功を収めた。そして確固たる名声と実力とともに、28歳で故郷アントウェルペンに戻る。以後、再び英国に渡るまでの5年間は、肖像画の注文が絶えることなく多忙を極めたが、その間オランダに2度赴き、そこでオランダ総督オラニエ公フレデリック・ヘンドリックとその妻アマリア・フォン・ソルムスの肖像画を数点描いた。本作はそのうちの最も出来映えの良い作品で、滑るような白い肌をもつ貴婦人のからだが、高雅な黒のドレスに包まれ、茶系色の錦織の掛け物を背景にしてシックな色調の中に凜然と輝きを放っている。ここに描かれた女性の夫フレデリック・ヘンドリック(1584ー1647)は、1625年から没年までオランダの総督を務めたオラニエ=ナッサウ家の公爵で、現オランダ王室の遠い源流に位置する人物である。この夫妻の肖像を描いた対作品は2組あり、本作はもとオラニエ=ナッサウ家に伝わる完成度の高い方の組の妻の絵で、これと対をなす夫の肖像画は現在アメリカのバルティモア美術館に収蔵されている。またもう1組はマドリードのプラド美術館の所蔵となっている。この絵についてはエリック・ラールセンがカタログ・レゾネの中で次のように評価を下している。「妻の肖像の出来映えは、夫のそれより上質と思われる。どちらも間違いなくオリジナル作品である。この夫人の肖像画は、念入りに技法を駆使した素晴しい仕上がりである」(『ヴァン・ダイク』)
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