島根県出雲荻杼古墓出土品
しまねけんいずもおぎとちこぼしゅつどひん
概要
昭和40年(1965)に出雲平野を流れる斐伊川左岸の微高地から発見されたものである。方形の墓壙内に陶製の大甕を据え、内部に遺骨と青磁の椀、皿を納め、板状石で蓋をし、その上に礫を敷いて塔婆が建てられていたという。青磁碗は2口とも深みのある端正な作りを示し、外面に25葉の鎬蓮弁(しのぎれんべん)を表わす。厚くむらのない施釉で翠青色を呈す。皿は口縁が大きく開く浅い器形をなし、素地はやはり灰白色の磁質で青磁釉を厚くかける。内面に細かい花弁様の鎬(しのぎ)を施し、内底中央に印影の草花文を飾る。いずれも形姿、釉調に優れた完形品で、13世紀の中国南宋時代の龍泉(りゅうせん)窯で焼成されたものと考えられ、日本出土の中国陶磁の中でも極上の遺品である。なお、陶製の甕は肩の張った短頸の大型品で、愛知県の常滑(とこなめ)古窯で焼成された13世紀の鎌倉時代の遺品である。
奈良国立博物館の名宝─一世紀の軌跡. 奈良国立博物館, 1997, p.282, no.20.