袋田の滝及び生瀬滝
ふくろだのたきおよびなませだき
概要
関東地方北部の久慈川中流の支流である滝川が,東方の生瀬盆地から西方の低地へと流れ落ちる渓谷の二つの滝である。約1,500万年前の火山角礫岩(かざんかくれきがん)層の大きな節理(せつり)・断層に沿って河水が流れ落ち,西方の凝灰質砂岩層(ぎょうかいしつさがんそう)等を浸食することにより形成された。
袋田の滝は4段から成り,総高78.6m,最大幅50.7m。「四度(よど)の滝」の異称を持ち,弘法大師空海が「四度(四季)」にわたり滝を訪れたことに由来すると伝わる。近世には水戸藩主が領内巡検の途上に訪れ,徳川光圀(みつくに),治紀(はるとし),斉昭(なりあき)も滝の秋景を和歌に詠んだ。近代には,大町桂月(おおまちけいげつ)・長塚節(ながつかたかし)など数多の文人が袋田の滝の風景を詠った詩歌を残し,昭和2年(1927)の「日本二十五勝」にも選ばれた。こうして,袋田の滝は名実ともに日本を代表する名瀑として知られるようになった。また,生瀬滝にはこの地を拓いた大太坊(ダイタンボウ)にまつわる民話が伝わり,長らく地域の人々に親しまれてきた。
濃灰色の岩盤上に白布を引き流したように見える二つの滝は,右岸の屏風岩,左岸の天狗岩とともに緑樹・紅葉に彩られた優秀な風致を誇り,四季を通じて見る者を魅了し多くの芸術作品に描かれてきたことから,観賞上の価値及び学術上の価値は高い。