王はレダン山の王女との結婚を望んだ
おうはれだんやまのおうじょとのけっこんをのぞんだ
概要
王はレダン山の王女との結婚を望んだ
おうはれだんやまのおうじょとのけっこんをのぞんだ
ユソフは、マレーシアに古くから伝わる昔話(参考『レダン山のお姫さま』、藤村祐子/タイバ・スライマン編訳、財団法人大同生命国際文化基金、2003年)に、インスピレーションを受けて、本作を制作した。
レダン山に住む光り輝く王女に求婚したマラッカ王は、王女に結婚の条件として、黄金の橋の建設やコップ一杯の王子の腕の血などの難題を要求される。しかし、王は王女との結婚を強く望むあまり、次々にその要求に応え、ついにはわが子までも手にかけようとするのである。ところが、王女は王のこうした冷酷さを理由に結婚を拒否し、かくして、時は流れ、きらめく黄金の橋も、時の経過とともに生い茂る樹木に飲み込まれていく…という話である。実際にマレーシアにあるレダン山では、現在でも不思議なことが体験されることがあるという。作品の上部に巻かれた布の黒色や、先端にくくりつけられた槍を思わせる移植こては、林立する木々の姿とあいまって、入るものを拒むかのようであり、その姿はまるでこの伝説を象徴するかのような黄金の橋を内包するレダン山を想起させるのだ。
本作は、アジア競技大会広島アートフェスティバル「アジアの心とかたち」展(1994年)のために制作された。
ユソフは、マレーシアに生まれる。マラ工科大学、イギリスのマンチェスター工芸学校で学ぶ。1988・90年クアラルンプールで開催された現代青年展で優秀賞受賞、1991年にはサロン・マレーシア1991/1992で文化芸術観光大臣賞(大賞)受賞、1997年にはベネチア・ビエンナーレに出品するなど、気鋭の作家として東南アジアを中心に活発な制作活動を行う。様々な素材を駆使し、マレーシアに伝わる民話や神話、また社会問題や事件を批評的に取り上げている。
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広島県立美術館