善きサマリア人

版画  リトグラフ(石版画) / ヨーロッパ 

ブレスダン、ロドルフ (1822-1885)
1861年
リトグラフ・紙
56.4×44.4
額装

 主題は新約聖書のルカ伝(第十章三十~三十五節)から取られている。ある人が問う。「己のごとく汝の隣を愛すべし」とあるが「汝の隣」とはだれか。イエスは答える。エルサレムよりイェリコに下る旅人が強盗に身ぐるみはがれて半死半生の傷を負った。祭司や神に奉ずるレビ人にも見捨てられた彼を介抱したのは、反目し合うサマリア人であった。この逸話において、絵画化されるのは、圧倒的に救済の場面である。過去の歴史の呪縛を博愛の精神によって超克するクライマックスをうたい上げてきた。その例を求めるなら、バッサーノやドラクロワ、果てはゴッホにまでたどり着くだろう。もちろん、われらがブレダンスもこの系譜を知らないはずはない。しかし、彼は中心的モチーフを暗うつな森に封鎖し、不気味に目を光らせる動物たちをちりばめた。しびれるような細密描写の魅力に誘引され、うっかりすると私たちのまなざしは出口を見つけられない。しかし、しばしその誘惑に耐えていただきたい。空虚な中心には東方風の衣装の男とうち捨てられた半裸の男とが、まさに視線を通わせんとする瞬間が生起しているのだから。(生田ゆき)

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