日月山水図屏風
じつげつさんすいずびょうぶ
概要
6枚のパネルで構成された大きな屏風が、左右で1セットになっています。
向かって右は桜が咲きほこる春の景色、左は刈田の広がる秋から冬の景色です。しかし、よく見ると左右の印象がだいぶ違います。右の屏風は、桜や柳の木が大きくうねり、勢いよく流れ落ちる水流を描いて、動的なイメージなのに対して、左の屏風は様式化された水の流れを中心に、穏やかな田園風景と雪化粧した丘を遠景で捉えた、たいへん静かなイメージです。
右の屏風では、雲が金銀の箔(はく)を破ったり、大小さまざまな大きさにきったりしたものを貼り付けて表わされていますが、左の屏風では、大部分が箔押しによるものでたいへんおとなしい印象です。さらに、右では、桜の花弁や橋の欄干に胡粉(ごふん)という白い絵の具を盛り上げた立体的な表現が使われていますが、左にはほとんどありません。こうした、画面の構成や、技法の違い、またふたつの画面がつながらないことから、もとは別々の屏風だったのが、組み合わされたものと思われます。
面白いのは、太陽と月の表現です。右には太陽、左には月が表わされていますが、それぞれ金と銀でメッキされた金属板が貼り付けられているのです。これは、この時代に流行した技法です。
室町時代の屏風というと禅宗寺院の水墨画をイメージする方が多いと思いますが、なかにはこうした装飾的で華やかな作品もあるのです。それほど多くの作品が残されているわけではないので、こうしてご覧いただくのはとても貴重な機会といえるでしょう。