三角縁盤竜鏡
さんかくぶちばんりゅうきょう
概要
瀬戸内海に面した、山口県下松(くだまつ)市宮ノ洲(みやのす)古墳の出土品です。この古墳からは、ほかに鉄製品や土師器(はじき)などが出土したとされています。現在、当館ではこの4面の銅鏡を所蔵しています。そのうち、花びらの文様が配された内行花文鏡(ないこうかもんきょう)は、あまりきれいに仕上がっておらず、サイズも小さめであることから、日本製でしょう。残りの3面は中国製で、どれも「三角縁(さんかくぶち)」という名称がついているのは、縁の断面が三角形に見えるためです。主な文様として、中国の神様や聖なる獣が描かれています。中でも三角縁竜虎(りゅうこ)鏡には、中央にある、ひもを通す部分・鈕(ちゅう)の周りに4頭の獣の半身が配され、それを取り囲むように銘文が書かれています。内容は、「この鏡は王氏(おうし)という人物が作ったものである。この鏡を持つと、雨が降って五穀が実り、人民が安らかに過ごすことができる」というものです。
古墳時代初期の瀬戸内海沿いには、同じような銅鏡をもつ古墳がいくつか存在していました。この地域は、海の交易で発展しました。古墳に眠っているのは、海運を司る権力者たちだったのでしょう。当時近畿地方で大きな力を持っていたヤマト王権は、中国や朝鮮半島とのつながりを保つため、瀬戸内海の航路を重視していました。こうした鏡は、同盟関係の証として、ヤマト王権から瀬戸内海の首長たちに配られたものだと考えられています。