金銅製沓
こんどうせいくつ
概要
熊本県の江田船山古墳から出土した沓(くつ)です。江田船山古墳は菊池川中流域に位置する前方後円墳です。5世紀後半から6世紀初めに造られたと考えられています。明治6年(1873)に、刀剣や、甲冑(かっちゅう)などの武器・武具類、金銅製の冠帽や沓、耳飾りや玉などの装身具、6面の銅鏡、馬具、須恵器など、豪華な副葬品がたくさん出土しました。現在それらは一括して国宝に指定されています。
ここでご紹介する沓は、底の1枚と側面の2枚、全部で3枚の薄い銅板をつなぎ合わせて作ったものです。側面の2枚を正面で合わせ鋲で留めています。この銅の上から全体に金メッキを施しており、今でも、一部に金色が残っています。表面には亀甲紋という、亀の甲羅の六角形を連続させたような模様が配置されています。一部、それぞれの六角形の角の部分に穴があいているのは、そこに歩揺(ほよう)と呼ばれる小さな丸い鱗のような飾りがついていたからです。少し見えづらいのですが、靴底も亀甲紋で覆われていて、スパイクのような突起が左右9個ずつついています。
靴のサイズは32センチ。こんなに大きく硬い上に、じゃらじゃらと飾りがついた歩きにくそうな靴、誰が履いたのでしょうか。実はこちらは、亡くなった人に履かせる靴でした。横たえた人に上からかぶせるように履かせたため、敢えて大きく作られており、靴底まできめ細やかなデザインになっているのです。詳しくはわかっていませんが、おそらく百済で作られたものでしょう。古墳に葬られた豪族への最後の贈り物だったのかもしれません。