持傘蓋菩薩立像
じさんがいぼさつりゅうぞう
概要
ベゼクリク石窟は中国新疆(しんきょう)ウイグル自治区トルファン市の北東約50kmにある、火焔山(かえんざん)の中腹を掘り込んでつくられた石窟寺院(せっくつじいん)です。その造営は唐時代7世紀ごろに始まり、高昌(こうしょう)ウイグル王国時代10~11世紀に最盛期を迎えました。
ベゼクリク石窟では、誓願(せいがん)図とよばれるある図柄の絵がよく見られます。これは、釈迦(しゃか)がその前世(ぜんせ)で、釈迦以前に世に出現していた仏(ほとけ)つまり「過去仏(かこぶつ)」に対し、成仏(じょうぶつ)するという誓願を発して修行に励み、将来「仏」(ほとけ)になるという予言を過去仏より与えられるという内容を描いたものです。これはウイグル人がこの物語に深く信仰をよせていたことを示しています。
この図もまたベゼクリク石窟の壁画に描かれた誓願図の一部で、鎧(よろい)を身に着け、幢(とう)を持った菩薩が過去仏を讃える姿を色彩鮮やかに描いたと考えられます。幢(とう)とは旗の一種で、仏教では仏堂の中や外に置いたり、儀式を行う行列が持ったりするなど、飾りや標(しるし)として用いられました。
このベゼクリク石窟の壁画からは、高昌ウイグル王国が中国文化を取り込んだ一面と、独自な表現スタイルを展開させていた一面の両方がうかがわれます。