湖上の月
こじょうのつき
概要
数多くの大観の功績のうち特筆されるべき一つは、途絶えていた水墨画の復興とより日本的な美意識に立った近代化である。 それまで水墨山水の大作を描いてこなかった大観であるが、 ぜひ描いてみたいと考えていたおり、琵琶湖の煙雨の美しさに打たれ、 1917(大正6)年に初めて6曲1双屏風 《雲去来》 (熊本県立美術館)で試みる。本作はその3年後に描かれ、やはり湖上を題材にしている。彩画で試みた没骨描写の成果を踏まえるとともに、 厳しい省略描写と大胆な構図によって、格調高く幽玄な世界が生み出され、 大観の意図する日本水墨画の行き方を示す好作例である。