加彩駱駝
かさいらくだ
概要
駱駝は「砂漠の船」と呼ばれるほど、シルクロードでの移動と交易品の輸送に重要な家畜であった。中国の人々にとってそれはシルクロードの砂漠を超え、はるか遠方の国々との交易によって財をもたらす、富の象徴でもあった。中国では豚・羊・牛・馬・犬などとともに駱駝も加彩土器で象られ、墓に副葬されたが、それは墓主の魂があの世でも豊かな暮らしを送れるように祈念してのことであった。このように副葬のためだけに作られた人物、ないし動物の陶器を「俑」という。駱駝の俑の副葬は遅くとも後漢時代に始まるが、異国との接触を通して文化の国際色がより豊かになる南北朝時代から唐時代にかけて、とくに盛んになる。本作は駱駝の表情や、積み荷、体毛などの細部に至るまで的確に表現されている。円熟味のある仕上がりは、盛唐の俑ならではのものである。