鉄道院短剣
てつどういんたんけん
概要
平造、庵棟。鍛は大板目流れ、刃文は浅く湾れて刃中に砂流しや金筋入る。茎は生で栗尻、鑢目は粗い勝手下り、目釘孔1つ開く。拵は、黒鮫革を3本の金線で斜めに絞り込んだ柄と茶地研出鮫革巻の鞘からなる短剣拵で、目貫金具は五七桐紋をかたどり、兜金・口金物・鐺にはそれぞれ桐唐草文を大ぶりに刻む。鞘口左右に佩鐶2つを設ける。本品は、鉄道院(のち鉄道省)で用いられた礼装用短剣で、明治42年(1909)の「鉄道院職員服装規則」に基づき、翌43年(1910)から大正8年(1919)に廃止されるまで用いられた。鉄道院では総裁以下、判任官までの官吏がこの規則の対象となり、職階によってその服制に細則が設けられていた。本品の拵は、柄に黒鮫革を用い、目貫金具に五七桐紋をあらわすことから、判任官の佩用短剣であることがわかる。廃刀令以後も明治時代まで伝統的な刀剣制作の技法が引き継がれていたことを如実に示す作品である。