敷物 入子菱幾何文様綴織
しきもの いりこびしきかもんようつづれおり
概要
このエリアに展示されている染織は、すべて遊牧民研究家、松島清江(まつしまきよえ)氏が1960年代から1980年代にかけて、インド西北部、パキスタン、アフガニスタン、イラン、イラク、トルコなどで収集したコレクションです。西アジアやインド北西部などで、ヒツジやヤギなどを飼いつつ移動する、遊牧の生活を送っていたさまざまな部族の女性たちが、山羊(やぎ)や羊などの毛をカラフルに染め、毛糸に紡いで、移動可能な簡便な機で織ったハンドメイドです。現在では、遊牧生活を送る部族は減少し、これらの染織はかつての遊牧民族の生活と美を伝える貴重なものです。
トルコやイラン地域で作られる、綴織で文様を織り出した敷物は、日本では「キリム」の名称で知られています。また、イランでは「ギリム」とも呼ばれます。トルコの遊牧民の間で織られていたキリムは、次第に他の遊牧民の間にも広まっていったようです。
このキリムは、中央に大きな菱形をデザインし、三重の縁文様を巡らせています。その内部を埋め尽くす複雑な幾何文様は、西イランを遊牧するクルド族が織るキリムの特徴です。クルド族は、トルコ、イラン、イラクの国境を行き来して遊牧をなりわいとした一大部族でした。さまざまな地域で遊牧を営んだことから、クルド族は地域によって異なるデザインのキリムを織ってきた歴史あります。