露草蜂蒔絵彫嵌櫛
つゆくさにはちまきえちょうがんくし
概要
鉄刀木(たがやさん)製、利休形、角棟の挿櫛である。利休形は、『玳瑁亀圖説』によると江戸で寛延・宝暦頃(1748~1764)に大ぶりなものが流行して文化初年までは大きかったが、文政8年(1825)以降に櫛が小型化する中で小ぶりな利休形が流行したとされる。本作のような4寸5分くらいの利休形は寛政頃(1789~1801)に流行した。鉄刀木の素地に櫛歯を残して朱漆を摺り込んで研出し、露草と薄に蜂を青ガラスと白蝶貝の彫嵌、高蒔絵で表す。表の右に「田附作」の蒔絵銘がある。田付家は江戸前期から京都や江戸で活躍した蒔絵師。本作は江戸中後期に江戸の芝に住んだ田付幸々斎の作とみられる。花柳章太郎(1894~1965)の旧蔵品で平成15年(2003)に遺族の青山久仁子氏より国立劇場へ寄贈された。