紺地葵紋散槍梅文辻ケ花染小袖
こんじあおいもんちらしやりうめもんつじがはなぞめこそで
概要
縫い絞りによる文様染を中心に描き絵を加えた「辻ヶ花」は、十五世紀の終り頃に誕生したと言われ、十六世紀後半には最盛期を迎え、豊かで華麗な様式を生み出し、武家の着衣としてもてはやされた。十六世紀末から十七世紀初にかけて「辻ヶ花」は最終段階に入り、おおらかさから瀟洒な文様へと江戸時代初の小袖に連なる過渡的要素を示すようになる。慶長期(一五九六-一六一五)以降の「辻ヶ花」作品群のうち、小袖・羽織など当初の形態のまま現存している作品のほとんどが徳川家康が関与した品である。徳川美術館には、現在、家康の「辻ヶ花」の衣服が七領、また十二領分の残缺を貼り込んだ帖が保存されている。この小袖は、従来の「辻ヶ花」の特徴からはやや脱した作品で、紺の練貫地に葵紋と槍梅文を右上がりの斜線状の配置とし、槍梅の鋭く真上に伸びる直線とが相まって躍動感溢れた意匠を生み出している。
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