信楽
概要
西洋の新しい画風に追随する日本画壇の状況に疑問を呈し、独自の表現を追求した須田國太郎。日本洋画の成熟と評価されるその作風の確立への道程には、ヨーロッパの油彩技法の研究と修練があった。
京都帝国大学で美学美術史を学んだ須田は、1919(大正8)年から4年間、主にスペインで古典絵画を研究、模写もしつつ自らの作画にも取り組んだ。帰国後、美術史学者として教鞭をとりながらも、1932(昭和7)年の初個展が認められて独立美術協会に迎えられ、以後、本格的な画業を展開した。
《信楽》は、独立展に加わり意欲的な制作に励んだ時期の作品で、第1回京都市展出品作。手前に平地が広がり、背後を山並みが支える構成は、他の多くの作品にも見られるが、ここでは水平の線や建物の矩形が安定感を強めている。家々や山、手前の積み藁などに確かな立体感や遠近感を与えつつ、独特の渋い色調によって全体をまとめ、風景に場所や季節を超えた、より普遍的な風格をもたらしている。