風俗図
ふうぞくず
概要
禿に三味線をもたせ、簪を唇に当てて悠然と歩をすすめる兵庫髷の遊女を中幅に、向って右の幅にはかぶき者風の男、左の幅には若衆を配した三幅対である。箱書きに「中白拍子左名古屋三郎右不破伴左衛門 三幅對 浮世又兵衞筆」と記されており、蒲生氏郷のもと寵童名古屋三郎と豊臣秀次に寵愛された不破伴左衛門の、遊女葛城太夫をめぐる鞘当ての巷説を描くものと知られる。
人物の横顔の描写が「彦根屏風」(井伊家蔵)のそれに近く、またかなり生々しい顔料を用いながら、画面から浮き立つことなく、遊女、遊野郎を描いて卑俗に陥ることがないなど、優れた描写をうかがわせ、その画風からは寛永期を下らぬことが推定される。
各幅にローマ字らしい朱文円印と、「サマ」と読まれる白文重郭菱形印が捺されるが、この珍しい両印は薩摩の島津家久(〜1638)の使用した鑑蔵印であるといわれ、これに誤りがなければ、本三幅対は寛永15年(1638)以前の作品となり、制作年代不詳の作品が多い寛永風俗画において、きわめて重要な位置づけを得ることとなる。
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公益財団法人 根津美術館