重之集
しげゆきしゅう
概要
三十六歌仙の一人源重之(生没年未詳)の家集で、冒頭に「しげゆきに歌たてまつれと、うちよりおおせごとありければ、たてまつりける、あたらしうよみて」とあるように、重之が帯刀先生(たちはきのせんじょう)の任にあった時、東宮(のちの冷泉天皇)に新たに詠んで献じた、春・夏・秋・冬各二十首、恋・恨各十首、および「かずのほかにたてまつれる」二首をあわせた百二首の歌を収めている。綴葉装の冊子本で、雲母を一面に撒いた淡い藍の打曇りのある料紙に、流麗な筆致で前半は歌を二行書き後半は散らし書きにしている。「重之集」は藤原佐理や藤原実方、平兼盛をはじめとする当時の代表的歌人との交友や、筑紫より陸奥にいたるさまざまな土地で詠んだ歌を雑然と集めた前半部と後半の百首歌あわせて三二三首から構成される系統本が原型に近いと考えられているが、本書は後半部の百首歌だけが独立した形で書写されている。百首歌の初期のものとして貴重な存在となっている。
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