薬師如来坐像
やくしにょらいざぞう
概要
奈良時代の仏像の中でも、成熟した唐様式の影響が特に顕著な作品。丸々とした頭部は非常に豊かな張りをもち、体軀(たいく)にも堂々たる風格が備わっている。複雑な動きをみせる着衣のひだの表現も写実性に富み、台座を覆い隠すように垂れる懸裳(かけも)が蓮弁の先端にかかる様子を表す点が注目される。この表現は7世紀末から8世紀半ばにかけての中国彫刻(敦煌(とんこう)第328窟の主尊など)にみられるもので、日本の作例では珍しい。垂下する衣も含め一鋳で造られ、像内は中空である。左掌にのこる持物の痕跡から、薬師如来(やくしにょらい)とされる。
なら仏像館 名品図録. 奈良国立博物館, 2010, p.119, no.158.