上沢遺跡佐波理鋺他井戸出土品
かみさわいせきさはりわんほかいどしゅつどひん
概要
上沢遺跡佐波理鋺他井戸出土品
かみさわいせきさはりわんほかいどしゅつどひん
兵庫県
8世紀
①佐波理鋺 銅・錫・鉛の合金製
②鉄製紡錘車
③土師器皿
④井戸構成材 木製(ヒノキ・スギ・サワラ)
①佐波理鋺 口縁径14.5㎝、底径5.5㎝、深さ 6.3㎝、重量193.58g
②鉄製紡錘車 径4.1㎝、厚さ1.09~2.88mm
③土師器皿 復元径19.4㎝
④井戸構成材
佐波理鋺1口、鉄製紡錘車1点、土師器皿1点、井戸1基(構成材15段57枚、太枘(だぼ)12個)
兵庫県神戸市西区糀台6丁目1 西神中央公園内
神戸市指定
指定年月日:20160323
神戸市埋蔵文化財センター
有形文化財(美術工芸品)
今回、指定する資料は、平成11年度の第31次調査において発見された奈良時代の井戸の出土品である。井戸は、一辺2.5m、深さ3.9mの方形の掘形をもち、その内に板材4枚を井籠に組んで井戸枠一段とし、計15段分をとどめる。下段4段分では、材に枘穴を穿ち、太枘を入れて固定している。
井戸の底からは、鉄製紡錘車や土師器の墨書皿などが出土した。これらは割れた状態で出土しており、土器の破片は井戸枠内に限らず、掘形からも見つかっている。このことは井戸枠を設置後に土器などが埋没したのではなく、井戸の開鑿に伴って意識的に埋められた可能性を暗示する。井戸枠の構築に先だち、井戸のためのまつりが行われたことを物語る。佐波理鋺は、井戸底に置かれた石の下からほぼ完全な形で出土した。最も薄い部分で約1㎜、口縁端部を少し厚くし、胴部は丸く平底で、高台はない。法隆寺や正倉院に類例がある。
今回指定する佐波理鋺は、形状・成分ともに正倉院の佐波理鋺に類似する優品で、伝世品以外で完全な形での出土例は貴重である。一般の集落では持ちえないこの一級品を埋納して設置した井戸もまた、平城宮以外ではほとんど類例を見ない堅牢で精美な構造を持っている。