立山文卵殻貼りパネル
たてやまもんらんかくはりぱねる
概要
横構図。板に、金雲のたなびく朱の空を背景とした、卵殻を使用して立山と思われる白い山並みを、図案化して表現している。連峰は、卵殻貼りで表現しており、山頂付近は卵殻の面積が広く、下がるにつれて、砕いた小さな破片を使用して、画面上の凹凸が顕著である。金雲の描写は、日本画の金泥のような効果を見せ、ぼかしとともに、ごく細い線も引かれている。
蒔絵であるのか、さらに調査が必要である。
山腹の霞は、箔(プラチナ箔?)を引っ掻いた線で表現している。画面の下半分に、細かい卵殻の上から薄い金属が貼られている。銘の「実」では、金属をはがして下の朱塗をみせている。画面下半分ではフチに沿って金属的な光沢が出ている。(焼箔といわれる技法か?)
小品ではあるが、意匠・技術ともに新鮮さがあり、太平洋戦争後の日展系工芸が目指した革新性が伝わってくる。
※作者について
合田実は高岡市大坪町に居住していた。父である合田平吉(高岡市戸出町出身)から錆絵を、山崎立山から蒔絵を学んだ。昭和44年(1969)日展に初入選し、以後14回入選。日本現代工芸展、日本新工芸展でも、入選、入賞した。日展会友、日本新工芸家連盟会員であった。漆芸パネルにおいて、錆絵、蒔絵の技を駆使しながら、対象を一部抽象化したモダンな作風である。展覧会出品作においては、漆芸の新たな可能性が探求されている。
<主要参考文献>
高岡伝統産業青年会編集「伝統工芸名鑑」(1984)ほか