扁平鈕式銅鐸
へんぺいちゅうしきどうたく
概要
銅鐸は、弥生時代に作られた青銅製のかねです。もとは、内側に舌(ぜつ)と呼ばれる棒を吊るし全体を揺らして音を鳴らしました。青銅は、主に銅と錫(すず)の合金です。この銅鐸も、いまは錆(さび)に覆われ黒くなっていますが、つくられた当時は金色に光り輝いていたはずです。弥生時代の人々は、いままで知らなかった金属の輝きと音にどんな思いを抱いたことでしょう。銅鐸が、どこでどのように使われたのか、詳しいことはわかっていませんが、おそらく、何らかのマツリに関わる祈りのための道具だったと考えられています。銅鐸は、これまで近畿地方を中心に約600個の発見例がありますが、そのうち70個ほどに絵が描かれています。それらの絵は、当時の人々の暮らしを今に伝えるたいへん貴重な資料です。
この銅鐸は、なかでも優れた表現で知られ、銅鐸としてははじめて国宝に指定されています。
それでは、絵を詳しく見ていきましょう。表裏ともに帯で6つの区画に分けられており、それぞれ絵が描かれています。一方の面には、上段から、トンボ、イモリ、シカを射る人、アルファベットのI字型の道具を持つ人、高床式の建物、杵で臼をつく人。もう片方の面には、カマキリ、クモ、魚を食べるスッポン、魚をくわえたサギ、スッポンとトカゲ、イノシシを狩る人とイヌが描かれています。よく見ると、人物の頭は丸と三角で描き分けられており、男性は丸、女性は三角で表わされています。
杵で臼をつく人、米を収めた高床式の建物、また、水辺の生き物が数多く登場することは、水田による稲作を中心とした彼らの暮らしを物語るものでしょう。