色絵花盆図大皿
いろえかぼんずおおざら
概要
18世紀前半にヨーロッパ輸出向けに作られた古伊万里・金襴手様式の大皿である。金襴手様式は、柿右衛門様式の後に成立した色絵磁器の様式で、1690年代頃に誕生した。「金襴手」の名のとおり、金彩(または黄色)を主として、呉須と赤・緑・紫色の上絵具で文様を施す。国内向けと欧州輸出向けの二つのタイプがあり、後者は、18世紀になると本作品のように、緑・紫色は使用されず、呉須に赤・金色の三色が基本となる。
見込に描かれた花盆図は輸出向け金襴手に最も数多く描かれた文様で、同時期の清朝磁器にもよく描かれた。本作品は、花盆図の中でも特殊で、花盆の壺や文様帯などヨーロッパの陶器や染織品に見られるデザインを意識的に採用している。特に人物文を描いた壺は非常に珍しく、注文主からの絵図などによる指示がないと描けなかった文様である。また、金襴手様式では、1690年代~1720年代頃までの早い時期を除いて、高台内に文様を描かないが、本作品には牡丹文が描かれている。さらに、口径が60cmを超えており、この点も18世紀の金襴手様式磁器では希少である。以上のことから、本作品は、ヨーロッパから依頼された特注品であったと考えられる。国内にある金襴手様式磁器のなかでも非常に珍しく、貴重な作品であるといえよう。