鈁
ほう
概要
平面の断面がほぼ正方形を呈する壺のことを鈁という。蓋は中央が正方形に縁取られ、そのなかに橋梁状の小さな鈕と四葉文を配する。その四方のなだらかな各斜面は台形に区画され、なかに巻雲文を施す。身は腹部上方に獣面形の座金具「鋪首」を飾るほか、とくに文様や装飾は見られない。しかし、鋪首を除く器身には工具で丹念に研磨された筋状の痕跡が随所に留まる。表面をできるだけ平滑に仕上げようとする前漢時代の青銅器製作の特徴をよく示している。
鈁は総高30センチを超えるものが一般的であるが、本作のように20センチ未満の小型の例も知られている。なかでも内蒙古自治区鄂爾多斯市東勝区漫頼古城で出土した鈁は、蓋の文様も大きさも本作と近似している。あるいは同じ工房の手による可能性も考えられる。