小鼓は能楽で用いる打楽器で、胴・革・調べ緒からなる。胴は全長約25センチで、主に桜材で作られている。革は直径約20センチで、若い馬の革を多く用いる。胴と革は調べ緒で連結され、演奏中は調べ緒の締め付け具合で音色を変化させる。また、革に息を吹きかけたり唾液をつけたりすることで湿度を保ち、柔らかな音を維持する。
　阿古（あこ）作と伝えられる小鼓胴で、請（うけ）には散らしカンナがあり、巣間（すあい）に筋違カンナがある。片方の請に「弥左衛門／（花押）」、もう片方に「竹田三郎／鑑氏（花押）」と黒漆で極書がある。
　外側は金梨子地に平蒔絵で夕顔を表す。葉脈は付描(つけがき)と引掻(ひっかき)で表している。夕顔の実が瓢箪のように表されているのは、能〈半蔀〉で出される作リ物の影響と考えられる。