都々古別神社の御田植
つつこわけじんじゃのおたうえ
作品概要
都々古別神社の御田植は、豊作を願って、年の初めに神楽などとともに、稲作の作業過程を、せりふのやりとりと簡単な所作で、模擬的に演じるものである。
福島県棚倉町【たなぐらまち】は、福島県の南部に位置し、茨城県、栃木県との県境にあたる。三県の県境が接する八溝【やみぞ】山から流れ出た久慈川【くじかわ】は、棚倉町を東北に向かって流れ、その後、大きく南に向きを変え、八槻地区から隣町の塙町【はなわまち】などを経て茨城県に入り太平洋に達している。八槻【やつき】地区は、棚倉町の南部、久慈川沿いにあって、町への入口にあたる。その地区にある八槻都々古別神社の拝殿で、毎年旧暦一月六日に御田植が演じられている。
拝殿は正面六間(約一〇・八メートル)、奥行き三間(約五・四メートル)で、公開当日になると、正面奥に御田植の道具をのせた机を据え、向かって左側に楽人と呼ばれる演じ手たちが座り、右手側に宮司や氏子総代などが座り、中央で御田植が演じられる。音楽は太鼓、締太鼓【しめだいこ】、桶胴【おけどう】太鼓、笛で行われる。まず神楽の松【まつ】舞、巫女【みこ】舞、幣【へい】舞が舞われ、次に、せき検分【けんぶん】、めばらい、田耕【うな】い触【ふ】れ、田耕い、くろばおとし、水取り、代【しろ】かき、畦【あぜ】ぬり、あしおとめ、お種【たね】祈祷、種蒔き、烏【からす】追い、田植触れ、田植、天狐の舞があり、天狐【てんこ】の舞の後に、楽人が全員で「中飯【ちゅうはん】」と言いながら参詣人に細長く切った餅をまいて終わる。
御田植には、松舞の採物【とりもの】や田植の早苗として使う松の枝のほ…