久多の花笠踊
くたのはながさおどり
概要
久多の花笠踊は、地元で花笠と呼ぶ、美しい造花で飾った灯籠を手に持ち、太鼓に合わせて歌い踊るもので、中世に流行した風流踊【ふりゆうおどり】の様子をうかがわせるものである。
久多は、京都市左京区の最北端にあたり、滋賀県と県境を接し、また福井県にも近い山間地帯で、この久多地区は、上【かみ】の町【ちよう】・中【なか】の町・下【しも】の町・宮【みや】の町・川合町【かわいちよう】の五つの集落で構成されている。花笠踊は、これら五つの集落が上【かみ】の組と下【しも】の組の二組に分かれ、互いに競い合うように伝承され、演じられてきた。上の組は上の町と中の町の二つの町で、下の組は下の町と宮の町と川合町の三つの町で構成される。
花笠踊の準備は、花笠の製作から始まる。この花笠は、四角の行灯を六角の台の上に固定し、その台の周囲に布を垂らし、全体を精巧な造花で飾り、灯籠と台の各面に切紙【きりかみ】細工を貼ったものである。かつては、これを笠のように頭にのせて踊ったので、花笠と呼ばれているが、行灯部分に蝋燭の明かりをともす、いわゆる灯籠を造花で飾ったものである。その造花は、菊や牡丹・朝顔などで、ほとんどが紙を材料に作るが、菊はキブシ、地元で「ハシマメ」と呼ぶ植物の茎の芯を材料にすることが特色である。茎から芯の部分を押し出し、その芯を斜めに細く切って一枚の菊の花弁にし、それを多数組み合わせて菊の花を作っている。
この花笠は、花宿【はなやど】と呼ばれる家を決めて町内の人びとがそこに集まって作る。下の町と川合町は合わせて一軒の花宿を決め、他は各町ごとに花宿を決めるので、…
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国指定文化財等データベース(文化庁)