静物
せいぶつ
概要
画面右下に署名:S.MiGiSHi
裏面に画題・署名・年記:静物 三岸節子 千九百四十三年 猛夏描
淡い色調のテーブルクロスの中に、赤や緑や黄色の鮮やかな色の果物が描き込まれ、背景は点描により装飾的に描かれて奥へと向かう視線を閉ざしている。格子柄のテーブルクロスは、節子が憧れたボナールもしばしば描いている。格子柄によりテーブルが奥からせり上がる様な感じが強調され、わずかな絵具をキャンバスに擦り付けるように塗ることで、やわらかな印象をもたらしている。ボナールについて節子は「デッサン淡彩などを見ていると、もう常住座臥生活に絵画があって、絵画はボナールの食事をすることのようなものだ。そして色彩の饗宴が渦巻き、思想の火華がたえず奏でられているといった感じを受ける。」(「近代の表現」『美神の翼』)と語っている。日常の生活の中で身近なものから絵画のモチーフを得て、常に豊かな想像力をもって絵画的な思考をめぐらせようとしていた姿勢がうかがえる。ボナールは1920(大正9)年頃から美術雑誌を通じて日本に紹介され、1940(昭和15)年には391点もの図版が掲載された本格的な画集も出版された(「ボナール展」1997年、図録より)。
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一宮市三岸節子記念美術館