歌舞伎小道具製作
かぶきこどうぐせいさく
概要
歌舞伎小道具とは、歌舞伎の舞台で使用される家具・調度の類や登場人物が身につける所持品、さらには駕篭【かご】・輿【こし】等の乗り物、食べ物一般、雪・雲等の自然現象、骨や切られた手足等の人体の一部など、大道具【おおどうぐ】・衣装【いしよう】を除いた広範囲なものを指し、重要無形文化財「歌舞伎」の上演に欠くことのできないものである。
一般に演劇の小道具は、茶碗などのように現在も使用されている実物を使用できるものもあるが、鎧【よろい】や刀のように一般的な生活では使用されなくなったものも多く、このような品物については、新たに製作して舞台で使用することになる。特に歌舞伎では、全体的な様式美が追求されてきたために、本物にこだわらず、それぞれの演目の登場人物に合わせたさまざまな約束事にしたがい、特別に工夫された小道具類が使用されている。劇的な効果を高めるために、実物より一回り大きく作られたり、さらに軽くて丈夫に、あるいは取り扱いが思い通りにできて、かつ危険がないようにするなどの目に見えない細工や仕掛けがあり、また反面、演技者におよぼす心理的影響から、観客には見えない部分にまで本格的な細工を施し本物らしさを追求する部分もある。そのため歌舞伎小道具製作者は、本物を作り得る知識・技術に加えて、役者や小道具方【こどうぐかた】(劇場での小道具担当者)からのさまざまな要求にこたえる高度な技術と歌舞伎に対する深い理解が要求される。
今日これらの歌舞伎小道具の製作に携わる技術者はきわめて希少であり、そのうえ若年後継者が払底しており、その保存継承を図ることが急がれている。
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国指定文化財等データベース(文化庁)