アイヌ古式舞踊
あいぬこしきぶよう
概要
北海道一円に居住しているアイヌの人々によって伝承されている芸能で、祭祀の祝宴やさまざまの行事に際して踊られる。アイヌ独自の信仰に根ざしている歌舞で、その様式にはきわめて古態をとどめているものが多い。とくに、信仰と芸能と生活が密接不離に結びついているところに特色があり、芸能史的な価値が高い。
アイヌの古式舞踊は、熊送り・梟祭り・菱の実(ベカンベ)祭り・柳葉魚(シシャモ)祭りなどのアイヌの主要な祭りに踊られてきたほか、家庭における各種行事の祝宴の際にも踊られ、また最近は、まりも祭りなどの新しい祭りでも披露されるようになってきている。
その内容は、祭りのための酒をかもす時に歌われる「杵搗き歌」や「ざるこし歌」に合わせて踊る作業歌舞のようなものから、祭祀的性格の強い「剣の舞」「弓の舞」のような儀式舞踊、「鶴の舞」「バッタの舞」「狐の舞」のような模擬舞踊、「棒踊り」「盆とり踊り」「馬追い踊り」などの娯楽舞踊、さらには「色男の舞」のような即興性を加味した舞踊があり、また、この多種多彩な曲目もそれぞれのコタンによって伝承曲目が異なり、さらに、その舞い方に小異があるという特色がみられる。いずれも歌(ウポポ)を中心とし、踊りは輪舞(リムセ)を基本として構成されている。
信仰あるいは生活の中から生まれた舞踊性をいまなお色濃く伝え、その中には舞踊の発生を考際するに足る内容を充分に包含している。
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国指定文化財等データベース(文化庁)