杉沢比山
すぎさわひやま
概要
杉沢に鎮座する熊野神社の祭礼を中心として演じられる山伏神楽系の一種である。東北地方の山岳部に近いところでは、かつて山伏修験の徒によって演じられていた神楽が伝えられてきており、この神楽を太平洋側では山伏神楽と呼び、日本海側では番楽と称しているが、鳥海山麓に伝承されているものはヒヤマと名付けられている。杉沢比山の比山という名は、鳥海山に由来するものらしく、鳥海山が火山であるところからヒヤマと呼んだとか、あるいは、月山に対して鳥海山を日山といったところから出たとする諸説がある。いずれにせよ、鳥海山を霊山とした山伏修験の徒によって伝えられてきた芸能である。
熊野神社の境内にかけられた三方吹きぬけの舞台で演じられ、大太鼓・笛・銅拍子を囃子に、謡につれて舞う。演目には「番楽」「みかぐら」「翁」「三番叟」「景政」「蕨折」など十四番がある。その芸態には能楽大成前のいろいろな芸能の要素を含んでおり、芸能史上きわめて注目すべきものの一つである。