鉢木
はちのき
概要
本資料は、能の演目「鉢木」の一場面を表現したもの。鉢巻姿のシテ(主役)・佐野
源左衛門常世が、執権・北条時頼よりもらった領地安堵状を誇らしげに見せつけている。
箱蓋表に「鉢木」、箱蓋裏には「紺谷英儀(印)」と墨書がある。資料の保存状態は良好
である。
<紺谷英儀(こんたにえいぎ)>
明治41年(1908)~昭和48年(1973)
高岡市中島町出身の彫刻師。大正14年(1925)富山県立工芸学校、昭和6年(1931)東京美術学校彫刻科卒業後、帝展・文展・日展に入選。昭和15年(1940)アメリカ万国博覧会に出店、昭和34年(1959)日展出品を止め「創型会展」に出品。弓道彫刻に始まり、戦後は能楽関係の彫刻、メダル、レリーフ等を得意とした。
(高岡美術作家ファイル参照)
<鉢木(はちのき)>
鎌倉時代中頃の冬、廻国中の先の執権・北条時頼が、上野佐野(現高崎市)で大雪に遭い、ある貧家に宿を求めた。家主・佐野源左衛門常世は一旦断るが、粟飯を出し、また愛蔵の梅・松・桜の鉢の木(盆栽)を焚いてもてなした。また常世は有事の際はすぐ鎌倉に駆けつけるとも言った。
鎌倉に帰った時頼は、常世の言葉の真偽を確かめるため、関東の軍勢を鎌倉に召集した。言葉通り一番に馳せ参じた常世に時頼は本領の佐野を返させ、新たに鉢の木に縁のある、加賀梅田(現金沢市)・越中桜井(現黒部市)・上野松井田(現群馬県安中市)の領地を与えたというもの。
<参考文献>〔参考:『カラー百科 見る・知る・読む 能五十番』(勉誠出版、2013年)ほか〕