牛伏寺銅板線刻十一面観音御正体
ごふくじどうばんせんこくじゅういちめんかんのんみしょうたい
概要
円形に裁断した銅板に十一面観音像を線刻した御正体で、上方の左右に小さな吊耳(鐶)を付けて奉懸を意図したことがわかる。つまり、形式的には、鏡の鏡面に仏教の尊像や神像を表す「鏡像」から「懸仏」に至る中間的な様相を示した遺品ということもできるが、こうした遺品が、おおむね12世紀後半に多く見られるのに対し、この御正体は、線刻がそれらに比して太く、しかもわずかに背面から打ち出して立体的な志向を促すところ、あるいは明快で雄偉な尊容表現を見ると、製作は鎌倉時代に降るものと思われる。