隠岐の海
おきのうみ
概要
空を舞う鳥が地上を見下ろすような視点で、海辺の家並と人々の暮らしをとらえています。縦長の画面の下半分以上を波打ち寄せる海岸とする斬新な構図をとり、軽やかなタッチで青緑色の色面を重ねています。水際や、赤と灰色の屋根の合間に、点景としてところどころに人物が配されています。本作品を描く大正3(1914)年の初夏、速水御舟は、山陰や隠岐の島へ旅し、題材を歴史人物から現実の風景へと転じました。みずみずしい感性にあふれる若き日の代表作の一つで、今村紫紅らと組織した赤曜会の第1回展に出品されました。
作者の速水御舟は、明治27(1894)年 東京に生まれます。同41(1908)年 松本楓湖の安雅堂画塾に入門。同43(1911)年 第10回巽画会展に初入選、翌年今村紫紅に出会い紅児会に入ります。大正3(1914)年 紫紅らと赤曜会を結成。同年再興第1回院展に出品、院友に推挙されます。同6(1917)年 日本美術院同人。写実と装飾の総合をめざし、さまざまな実験的表現を試みながら、近代日本画の革新に大きく寄与しました。