絹本着色 東都品川八ツ山図・京四條之涼図・浪花天保山図
けんぽんちゃくしょく とうとしながわやつやまず・きょうしじょうのりょうず・なにわてんぽざんず
作品概要
右幅は、品川宿のはずれにある芝高輪との境に位置する丘「八ツ山」から見下ろした東京湾が描かれている。広重は、描く季節に冬を選び、静かに降り積もる雪と旅路を急ぐ人々が描かれている。
中幅は、京都加茂川の中州に設けられた川床の上で涼む女性が描かれている。画面の中景に京の繁華街である河原町が描かれ、背景には嵐山が描かれている。また、女性像は、歌川派の表現により描かれており、広重は、風景画家として知られているが、歌川派が得意としていた美人画も巧みに描くことができたことが分かる作品となっている。なお、季節は、夏を選んでいる。
左幅は、大阪の天保山が描かれている。天保山は、天保2年から2年間にわたって実施された安治川の浚渫(しゅんせつ)に伴う残土を積み上げてできた人工の山である。海岸辺りには灯台が造られ、山には松や桜が植えられており、大阪でも有数の行楽地となった場所である。なお、季節は、春を選んでおり、この三幅対により雪、月、花と三都(江戸、京、大阪)を合わせて詩情豊かに表現している。