染付洋文字に獅子図水指
そめつけようもじにししずみずさし
概要
底面の印銘「萬古」から、江戸時代中期に桑名(現在の三重県)の沼波弄山(ぬなみろうざん/享保3~安永6年・1718~77)によって創製された萬古焼の作例とわかる水指です。染付で蓋と身に洋文字を配し、身の正面には番の獅子、反対面には闊歩する雄獅子の絵付を施しています。この獅子図は、当時日本に輸入されていたJ.ヨンストン『動物図譜』(1660年・アムステルダム刊行)からの転用であることが指摘されています。
絵付は、原本の挿図にみられるハッチング(線を連ねて陰影を表わす技法)ではなく、色の濃淡によって陰影を表わされています。デザインに珍しい動物を採用し、異国趣味に富む水指を製作することに主眼が置かれていたのでしょう。収納箱の箱蓋裏に「三阿」「号安東」とあることから、藤堂藩によって開窯された安東焼との関連が示唆されます。
【近世・近代の漆工・陶磁器・染織】