葉月物語絵巻
はつきものがたりえまき
概要
葉月物語絵巻
はつきものがたりえまき
歴史資料/書跡・典籍/古文書 / 絵図・地図 / 平安 / 日本
絵・平安/12世紀
縦21.2-22.1 横20.4-48.9
十二面のうち
詞書・鎌倉-南北朝 14世紀
重文
十一世紀中頃から十二世紀初頃に成立したとみられる逸名物語を絵画化した絵巻の、詞・絵ともに各六段からなる残巻である。現在の題名はこの絵巻第一段詞書の冒頭「八月十よひしもつかたなる所・・・・」の語句にちなんで、近年名付けられた名称である。物語の展開は詳らかにしえないが、現存部分では、秋を背景とした物語で、大将と姫君、宮と女君の二組の複雑な恋愛物語、あるいは軽いタッチの宮廷恋愛遊戯譚、継子譚の要素のある恋愛物語などの見解が示されている。絵には各段にわたり補筆-特に物語の主要人物やその周囲の調度など-が認められるが、古様を示す筆致や装束・文様などの有職からみて、十二世紀中頃の製作とみなされる。「源氏物語絵巻」につぐ物語絵巻の遺例として貴重である。一方詞書は、何らかの理由で鎌倉時代末期に書き改められたと考えられる。字は丸みをおびたやや癖のある筆致をみせ、確証はないが筆者を後二条院と伝えている。また紫の打曇り紙の料紙には、各段を通じて下絵として秋草や稲田、紅葉など秋から初冬の景物が金銀泥で描かれており、この時期の金銀泥絵による料紙装飾の代表的な作例の一つとして貴重である。
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