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カルディム『日本殉教精華』

かるでぃむ にほんじゅんきょうせいか

概要

カルディム『日本殉教精華』

かるでぃむ にほんじゅんきょうせいか

歴史資料/書跡・典籍/古文書

アントニオ・フランシスコ・カルディム編

制作地:ローマ

1646年刊

紙本活版(金属活字)印刷

縦19.8 横15.2 高4.4

1冊

ポルトガル人イエズス会士で日本管区長であったアントニオ・フランシスコ・カルディム(António Francisco Cardim、1596-1659)が編纂した、16世紀から17世紀の日本におけるキリスト教徒の殉教録。1646年にラテン語版がローマで出版され、1650年にはリスボンでポルトガル語版が出版された。本書はローマの印刷業者コルベレッティが1646年に出版したラテン語版である。
本書は3部構成となっている。第1部は、日本で宣教活動を行ったフランシスコ・ザビエルなどヨーロッパ人や、天正遣欧使節の中浦ジュリアン、日本人として初めてエルサレムを訪れ、ローマで司祭となったペドロ岐部カスイといった日本人イエズス会士・会員、イエズス会を支援した大村純忠、大友宗麟、高山右近の3名のキリシタン大名、計87名の略伝が記述される。各略伝の前には肖像あるいは殉教の様子を描いた銅版画が添えられる。銅版画はフランス人銅版画家ピエール・ミオット(Pierre Miotte)あるいはその工房の製作である。また、第1部扉の次に折り込まれているカルディム作成の日本地図は、「ブランクス/モレイラ型」と呼ばれるカテゴリーに分類される。イエズス会の36の支部を上部の余白に列記し、キリスト教が広まったところには十字の印を付けている。
第2部は「聖フランシスコ・ザビエルがキリスト教信仰を憎む異教徒の中から教会に従う使徒たちを打ち立てた日本において、4人の暴君が死をもたらした修道士と信徒のカタログ」(Catalogus regularium, et secularium, qui in Iapponiae regnis usque à fundata ibi a S. Francisco Xaverio gentis apostolo ecclesia ab ethnicis in odium Christianae fidei sub quatuor tyrannis violenta morte sublati sunt.)というタイトルで、1557年から1640年まで、日本で殉教した人物の名簿である。
第3部は「キリスト教を憎む日本の皇帝によって処刑されたポルトガル人4人の大使と同行者たちの至福の死」(Mors felicissima quvatuor legatorum Lusitanorum et sociorum quos Iapponiae Imperator occidit in odium Christianae religionis.)というタイトルで、日本との交易再開を求めるため、1640年に長崎に来航したマカオ使節団が処刑された出来事に関する記録である。第3部は、カルディムが1641年にスペイン語版を、1643年にポルトガル語版を出版しており、この出来事をヨーロッパに速報している。この出来事は、マカオ使節団が「かれうた御仕置之奉書」(いわゆる「寛永十五年令」)を破ったことに対する幕府の対処であったが、本書では結末を「栄光なる殉教」として殉教物語に仕立て、弾圧に屈しないイエズス会をアピールする点で、カルディムの布教戦略がうかがえる。
殉教録という性格上、本書には脚色された記述もあるが、一方で宣教師や日本人イエズス会士たちの容貌を視覚的に伝える。また、第3部については、状況を詳細に記す史料はオランダ語史料を除けばほとんどなく、日本・マカオ(ポルトガル)関係史を研究する上で重要な資料である。

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