波濤群鶴図
6面(旧永島家襖絵)
概要
重要文化財に指定された明和町の旧永島家に曾我蕭白が残した襖絵四十四面の内の一面。曾我蕭白は、鷹、鷲、鶴、孔雀などの鳥類を好んで描いている。中でも、優美な姿と高貴な鳴声を持ち、神聖な鳥として尊重されてきた鶴は、蕭白得意のレパートリーであった。
「波濤群鶴図」には襖一〇面以上にわたって、鶴と水流とがダイナミックに描かれ、旧永島家襖絵でも、鶴の主題が大きな比重を占めていたことが分かる。
ここでは、水流が太筆を用いて道感豊かに描かれているのに対して、鶴は細筆の謹直な線描によって表され、蕭白の自由闊達な水墨技法を見ることができる。
蕭白は、ややもすると癖の強い自由奔放な表現ばかりが強調されるが、この絵に見られる中国絵画や室町絵画学習も、蕭白画の大きな要素として軽視することはできない。 (毛利伊知郎)